Beach House - I -Sea Viewing Platform/海見台-

初めてこの場所を訪れた時、この自然環境(海・緑・空・風)とどう美しく絡み合い、解け合い、切り取り、取り入れるか、これがこの建物の鍵になると思った。 ここの環境は、リアス式海岸の海を見渡せる場所にあり、時折、漁船やボートが行き交う静かな入り江に位置している。海と緑のコントラストは美しく、都会暮らしのオーナーが時に訪れるこの場所を満喫できる建物が要求された。 敷地は前面に海との間に細い道路があり、行交う人はほとんどいないとはいえ、外部から内部からの視線も考慮しなければならなかった。 地面の高低差、建物の高低差、内部空間の高低差で生み出される機能美として、この建築の意匠、プランニングを構築している。 建物を高床式にしているのは、地上と微妙な距離感を意識し、ある種地上とは違う別世界を創り、水に浮かぶ浮遊感を表現している。これはこの地域独特の時々起こる高潮をに対処したものと、道との視線を避けるというものでもある。 翼のような軒先は、風の強いこの地域である現地の建物全体の空力と、建築の軽快さ、内部からの借景のフレームとして、外部の風景を切り取る機能としてデザインしたものである。 この住宅は4層の断面構成がされており、大部分はワンルームの空間で高低差により各レベルはスキップフロアーで緩やかな階段でつながっており、居る場所によって視線が交差し、外部・内部の風景が変化し、視覚のコントラストによりダイナミックな内部空間を構成している。 建物の内部と外部に連続性を持たせ、外の景観を室内に取り入れ、海辺の自然環境と美しく解け合い、この建物は海を見渡す装置かのようである。 アニミズム的な造形と静かで均衡ある造形とがぶつかり合ったシンプルなモダニズムな美を追求しみた。 ある日、出来たばかりの建物のテラスに座ると、のぼったばかりの満月の月が見えた。海面に映し出される月はまるで桂離宮の『月見台』での風景と重なった。